平成29年度
Science Dialogueの開催
サイエンス・ダイアログとは、(独)日本学術振興会JSPSのフェローシップ制度により来日している外国人研究者(JSPSフェロー)有志が、近隣の高等学校等において、英語で研究に関するレクチャーを行う機会を提供するプログラムです。
本年度は、6月21日(水)の6・7限に応用数理科2年生40名を対象に実施いたしました。講師は神戸大学の Vesna LAVTIZAR 先生(スロベニア)で、環境解析学をご専門とされています。また、講演助手として神戸大学M2の Lin Yingqing 先生(中国)にもお世話になりました。
事前に、ご講演のAbstractやkey words をお送りいただいていたので、生徒配付資料として印刷するとともに、英語科及びALTのMatt先生・Travis先生にもScience English の時間を用いてご指導をいただき、ワークシートによる事前学習を行いました。
レクチャーでは、初めにスロベニアについての説明があり、特に大学授業料無料の話にはすべての生徒が驚いていました。次に研究内容についての説明がありました。船底に生物が付着するのを防ぐため船に塗布する防汚塗料は生物に有毒であり、それら化学物質から人生と環境を守る研究をしているとのことでした。その後研究職に志した理由や研究における英語の重要性についての話がありました。
All English の講義であり、英語の聞き取りに苦しんだ生徒も多くいましたが、ジェスチャーを交えた丁寧な対応とポストドクターである若さと活気を感じる話でもあり、生徒もこの2時間で非常に打ち解けることができました。講演後のアンケートでも、英語のレクチャーはやや難しかったようですが、講義全体の満足度は高いものになりました。
Vesna LAVTIZAR 先生、Lin Yingqing 先生、神戸大学 岡村秀雄 先生、そして機会を与えてくださったJSPSに感謝いたします。
応用数理科3年 高大連携講座 (徳島文理大学薬学部)
細胞の抗体を用いた染色 ―インフルエンザ感染細胞を染めて見てみよう―
徳島文理大学薬学部教授 葛原 隆 先生 と 生化学教室のみなさん
6/20(火)午後,応用数理科3年生のうち,受講を希望した10名の生徒が標記の講座に参加しました。講座の概要説明と,お世話くださるスタッフの皆さんに自己紹介をしていただいた後,実験室へ移動して4つの班に分かれ,各班で操作を進めていきました。
生物は,体内に侵入した病原体や毒素などを異物として認識し,これを排除しようとするはたらきが備わっています。これが,「免疫」とよばれる生体防御機構の一つです。この機構がはたらく過程で,異物側の「抗原」と侵入された側の「抗体」とよばれる物質が結合する「抗原抗体反応」がおこり,その結果,病原体などから体が守られるしくみとなっています。
今回の実験では,すでにインフルエンザウイルスに感染させた後,さらに抗体で処理した細胞を用いました。ウイルスに感染している細胞は,その抗原によって抗体が結合しています。そして,この抗体には「蛍光標識」という仕掛けが施されています。この抗体で処理した細胞をDAPIという蛍光色素で染色して,蛍光顕微鏡という特別な機器で観察します。すると,顕微鏡のモニター画面に青色と緑色に光った部分が確認できます。それぞれ,青色の箇所は細胞の核,緑色の箇所は先に処理した抗体の存在を意味しています。すなわち,この観察方法によって,青色と緑色が重なっている領域が,ウイルスに感染した細胞であることが分かるのです。
ウイルスはとても小さく,光学レンズでは観察は不可能です。この方法は,光学機器で細胞に感染したウイルスの存在が確認できるように工夫した実験技術の一つです。マイクロピペットを用いるのに苦戦した生徒もいましたが,自分たちが染色した細胞を無事観察でき,結果をプリントアウトしていただきました。
講座の最後に,徳島文理大学薬学部について案内をしていただきました。薬剤師国家試験の合格状況や特待生制度のことなど,短い時間でわかりやすくまとめていただきました。葛原先生をはじめ,生化学教室のみなさんには,この講座のために,貴重なお時間をいただきまして,誠にありがとうございました。
お礼の言葉とともに,城南高校のSSH事業に対しまして,今後もますますのご支援,ご協力賜りますよう,どうぞよろしくお願いいたします
応用数理科3年 高大連携講座 (徳島大学理工学部光情報システム)
理工学研究部 教授 陶山史朗 先生
6/20(火)午後、応用数理科3年生は物理・化学・生物の各分野に分かれて高大連携講座に参加しました。物理分野を選択した16名の生徒は徳島大学理工学部光情報システムの陶山先生の研究室で研修を行いました。
研修前半では、陶山先生から光情報システムでの研究内容についてお話いただいた後、2班に分かれて、2つの実験室にて研究室の学生の皆さんから、各自が行っている3D技術に関する様々な研究内容について、わかりやすく熱心にご説明いただきました。本校生徒も、自らの課題研究を思い起こしながら集中して説明に耳を傾けていました。
後半は再び陶山先生のご説明の後、「アーク3D(光の散乱を利用して立体画像を浮かび上がらせるもの)」作成の実習を行いました。参加した生徒は各々「月と星」「ハート」「ピカチュー」などの画像について立体画像を作成観測し、楽しみながら体験的に学ぶことができました。
熱心にご指導いただいた陶山先生、研究室の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
208HR課題研究中間発表Ⅰ
6月14日(水)5~7限の3コマ通しで、応用数理科2年生の課題研究中間発表Ⅰが行われました。現時点での研究成果を11の研究班が発表し、お互いの研究についての情報共有や先生やクラスメートからのアドバイスを受け今後の研究を深化させることが目的です。学校長・教頭・理科教員の他、数学科・英語科の先生、ALTのMatt先生やTravis先生にもご参加いただきました。生徒も最初は緊張がありましたが、徐々に雰囲気にも慣れ、後半は大変活発な意見交換ができました。テーマ決めに苦慮し、実験データが得られていない研究班もありますが、今回いただいた質問やアドバイスを今後の糧とし、研究が進み成果が得られることを期待します。
高大連携応用数理科1年(徳島文理大学薬学部)
高大連携実験教室(サイエンスイントロダクション)2017年5月19日金曜日
徳島文理大学薬学部にて、放射線薬品学研究室 教授 張功幸先生、助教 伊藤優太先生・大澤昴志先生、学生 中西愛佑美さん(城南高校応用数理科OG)・人見優香さん・脇田佐和子さんによる指導で、応用数理科1年40名(男子19名女子21名)に対して、蛍光と化学発光に関する高大連携実験教室が行われました。小休止を挟んだ二部構成で3種類の実験を行いその解説を聞きました。
スタッフ紹介・安全上の注意・試薬の場所などのイントロダクションに続いて、次のような内容で実験を行いました。教授や学生など指導陣の中に徳島県出身や直接の先輩がいる事で、親しみと憧れを持って過度に緊張する事無く講義や実験を楽しんでいました。
実験1:蛍光フルオレセインを合成しよう。
レゾルシノールと無水フタル酸に濃硫酸を加えシリコンオイルのバスで加熱しながら色の変化も観察する。室温まで放冷し、エタノールを加える。また、水酸化ナトリウム水溶液に一部を加え、酸性条件と塩基性条件での比較ができるようにした上で、遮光下と遮光でUV照射とで比較する。
実験2:幾つかの蛍光物質の蛍光を見てみよう。
ペリレン,ローダミンB,9.10-ジフェニルアントラセン,9,10-ビス(フェニルエチル)アントラセンをアセトニトリルに溶かし、実験1同様の比較をする。
実験3:幾つかの蛍光物質の化学発光に挑戦。
実験2で用いた蛍光物質に、シュウ酸ビス(2,4,6ートリクロロフェニル)と30%過酸化水素水,サリチル酸ナトリウム,フタル酸ジメチル,t-ブタノールを加え、UVの代わりに化学変化でエネルギー供給し光る事や、これらを巧く混合する事で様々な色が得られる事、さらに撹拌のしかたで光る時や強さを変えられる事も学びました。
蛍光物質を合成し、UVからエネルギー供給し光る事を確認し、UVの代わりに化学変化でエネルギーを与え光らせるという3部構成で理解を深めるようになっています。芳香環を持った化合物中心であったので共役二重結合やエネルギー吸収、電磁波の波長とエネルギーや色といった高校の授業で学ぶ多くの内容に関連しています。
1年生なので、「化学」の授業も受けておらず、サイエンスイントロダクションでも化学分野の授業がまだなので、科学部化学班以外の生徒については化学の内容の予備知識も実験器具の扱いも不十分な状態での受講でした。保護めがねと手袋着用、劇薬はドラフトで大学生が付き、有機溶媒はジクロロエタンを避け毒性や刺激臭の低いアセトニトリルを選ぶ等という安全管理ときめ細かなガイダンスで実験操作は円滑かつ安全に行われました。主たる化合物の構造式を示しながらもわかりやすい解説で、生徒は難しさよりも興味を感じ、鮮やかな色の変化や個別での微妙な差異を楽しんでいました。UVライトの数などの制約で班別の形式を取っていましたが、実験自体は個別で行われたので、生徒一人一人が自分の試験管の色について責任を持って実験し、班で4色揃って比較できました。高価な試薬も含まれていたので高校では実施が厳しいのですが存分に実験させていただきました。また、発光とはいえ明るい所では見にくいため、専用のボックスを用意するなど随所にご配慮をいただきました。ご指導頂いただいた徳島文理大学の関係者のみなさまに心より御礼申し上げます。