令和6年度活動内容
応用数理科308HR 高大連携事業(物質科学分野3回目)
6月18日(火)14時から17時にかけて、徳島文理大学薬学部にて北村圭先生並びに学生スタッフの方から、薬品合成実験としてアスピリンの合成を指導していただきました。高校の5限目が終了した後、生徒7名・教員1名が大学に移動しました。男女2つの班に分かれると簡単な自己紹介の後に実験の説明があり、サリチル酸からアセチルサリチル酸(アスピリン)を合成しました。
サリチル酸を無水酢酸とじっくり反応させ、氷浴により冷却すると白色の結晶が得られました これを吸引ろ過して結晶を生成した後、再びエタノールに溶かして不純物を取り除くと真っ白な結晶になりました。収率は男子42%、女子が何と91%もありました。その後、塩化鉄(Ⅲ)により未反応のフェノールを確認したり、各磁気共鳴装置NMRを用いて物質の構造を確認しました。
生徒たちにとってとても有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました。
応用数理科Advanced Science 高大連携授業 生命科学
6月11日(火)徳島大学教養教育院 教授 渡部 稔 先生の研究室へ訪問させていただき、Advanced Science 高大連携授業 生命科学を実施しました。今回のテーマは「お米の品種をDNA解析により調べよう」です。PCR法、電気泳動など先日理数生物探究で習った内容が盛りだくさんです。あきたこまち と ひとめぼれ は コシヒカリを親とした掛け合わせで品種が生み出されておりそれぞれの第6番染色体に存在する遺伝子の持ち方が異なっています。その部分をPCR法で増幅し、電気泳動でその存在を調べることで、品種が分かる仕組みです。基本的にウイルスのPCR検査やワカメの品種特定など同じ方法で行われています。
さて、最初はPCRでターゲットとする遺伝子領域を増幅します。まずPCRに必要な溶液をまぜ合わせマスターミックスを作ります。マスターミックス作成の際のタッピングやマイクロピペットの操作については、何回かしているのでしっかりできますね。その後、お米を砕き、それをPCR反応溶液が入ったマイクロチューブに入れ、PCRを行う機械であるサーマルサイクラーにセットし遺伝子増幅を行います。PCRは少し時間がかかるのでここまでです。
さらに、2種類のDNA断片を染色したものを電気泳動にかけ分析しました。2種類のDNA断片が移動していき、分離している様子がよく分かったと思います。来週は、自分たちが作ったDNA断片を電気泳動にかけます。果たして成功するでしょうか。楽しみです。
マスターミックスを作成しています お米を砕いてDNAを取り出しやすくします 砕いたお米をPCR溶液内に入れます
遠心分離にかけ PCRを行うサーマルサイクラー 最後に練習として電気泳動を行い
にセットします ました。青が長い断片、紫が短い断片です
「生物学オリンピック」講習会について
6月9日(日)徳島大学にて生物学オリンピック講習会が行われました。本校から応用数理科2名普通科1名計3名が参加しました。午前中は高校生物学を学んだ後、観察・実験を行いました。受精卵の状態で、遺伝子変化を起こさせ作成したアルビノのイモリやアフリカツメガエルを観察したり、電気泳動を行ったりしました。電気泳動では、DNAの長さの違いによって、泳動距離が変わることを利用して、DNAの長さの分析ができることを理解しました。午後からは、過去問題についての解説講義を受講しました。本番は非常に難しいですが、論理的に深く考えることの面白みを理解し、楽しみながら取り組んで欲しいと思います。
アフリカツメガエルのアルビノ個体です イベリアトゲイモリのアルビノ個体です。イベリアトゲイモリは
(部分的にアルビノになっている個体もいます) 年間通して繁殖し、生命力も高く、これからモデル生物として期待です
長さの違うDNAに色を入れ電気を流すと 長さの違いに応じて泳動距離が変わります
応用数理科308HR Advanced Science 生命科学1回目
火曜日の応用数理科の授業Advanced Science生命科学分野 第一回目は、「花粉管の伸張とスクロース濃度」について、インパチェイス(アフリカホウセンカ)を材料に実験を行いました。スクロース濃度が0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%の寒天培地を作成し、花粉を線上にまき、発芽率と花粉管が伸びた長さをミクロメーターで測定しました。結果はスクロース濃度は0%、5%、10%でよく伸び、15%以上で伸びにくくなり、30%では全く伸びていないことが分かりました。スクロース濃度が0%でも、吸水が起こりアフリカホウセンカの花粉管は伸張することが分かりました。発芽率は20%で14%(66/466)、25%で1.3%(3/232)で、0%~15%の平均52%より大きく低下しました。
インパチェンスの花粉管伸長は、寒天培地でなくても起こることが知られています。スクロース濃度0%の条件で、寒天の濃度を変数として下げていき、寒天と花粉管の伸長について調べてみたいと思いました。
また、2つ目の実験として、めしべをすり潰した抽出液をつくり、抽出液を塗った側と塗らなかった側についてどちらに伸張する割合が高いか実験を行う予定でしたが、時間がなくここまでになりました。
観察した結果を分析し、しっかり考察すれば、次の検証内容を考えることができ、より深い内容まで到達できます。
限られた時間の中ですが、放課後等も利用しながら、生徒達が自然現象についてじっくり考える機会を作っていきたいです。
寒天培地に蒔いた直後です。4カ所から花粉管が伸び 寒天培地に蒔いて20分後です
ようとしていて、そのうち1つが長く伸びます 発芽率を求めると共にミクロメーターで長さを測定し、
平均の値を求めます
応用数理科308HR Advanced Science 物質科学1回目
毎週火曜日は応用数理科の授業「Advanced Science」があります。クラスが物理・化学・生物・地学の4分野に分かれて、様々な実験や体験を行います。高大連携実験教室もこのときに実施します。化学分野は物質科学という講座を設けて、6月中に4回の実験等を行います。
最初ということで、モール(Mohr)法を用いて吉野川流域及び海岸線の塩分濃度を測定してみました。この沈殿滴定は、塩化銀AgCl(白色沈殿)とクロム酸銀Ag2CrO4(赤褐色沈殿)の溶解度積の差を利用して、塩化物イオンCl-の濃度を測る方法です。10倍にうすめた海水をコニカルビーカーにとり、少量のクロム酸カリウム水溶液を加えた後、褐色ビュレットを用いて硝酸銀水溶液を滴下します。当初は白色沈殿ばかり生成しますが、塩化物イオンがなくなるとクロム酸イオンが銀と反応して赤褐色沈殿が生成します。そこまでの硝酸銀の滴下量から塩分濃度が求められます。
結果は以下の通りです。
旧吉野川橋直下 0.79%、 しらさぎ大橋直下 0.71%、 小松海岸 2.2%、 大神子海岸 2.4% でした。
この結果より吉野川河口から5kmさかのぼった地点でも塩分が含まれており、汽水域であることが改めてわかりました。吉野川の冬の風物詩であるスジアオノリの養殖は、このような環境で行われています。
応用数理科107HR Science Introduction 徳島文理大学での高大連携授業の実施について
5月24日(金)13:30から徳島文理大学薬学部を訪問させていただき、ScienceIntroductionの授業として、応用数理科1年生107HRを対象に高大連携授業を行いました。入学して初めての高大連携講座であり、生徒たちも楽しみにしていました。
授業は、徳島文理大学薬学部機能形態学研究室 井上 正久教授が担当していただき「食作用と生体防御」をテーマに講義と実習行いました。最初は講義室にて、好中球やその他の食細胞の働きや、好中球の特徴である分葉核は、血管壁等をすり抜けるためのものであることを説明していただきました。
その後、実験室に移動し、マイクロピペット等を使い、血液飛沫標本を作製し、メイグリュンワルド・ギムザ染色により血液細胞を染色し、顕微鏡で観察しました。さらに、細菌感染させたマウスの筋組織の切片を作成し、細菌感染により変形した筋組織や細菌を排除しようとして好中球が集まっているところを観察しました。
実験の後は、研究室を訪問させていただき、X線解析機器の説明などを行っていたただきました。
生徒たちは、実習等充実した表情で取り組んでいました。大学での学びについて、具体的なイメージが持てたのではないでしょうか。高大連携授業により、高校での学びと大学での学びをつなげることで、生徒の主体的な学びを推進し、科学的な見方考え方を育成していきたいです。
生徒のポートフォリオより一部抜粋(高大連携授業により学んだこと)
「血液の成分(赤血球、白血球など)を実際に見て、白血球の核の仕組み(分葉)や血液内の赤血球と白血球の大きさの違い(白血球が赤血球の2倍ほど)を身近に感じることができました。また、初めて名前を聞いた染色液(メイグリュンワルド液、ギムザ染色液など)や器具を使用して、新たな技術や知識を身につけることができました。」
「前までは目先の進路である高校の事しか考えていなかったので全く大学のことが分からなかったが、この高大連携授業に行ってから大学に対するイメージが変わった。大学と言えばどこか堅いイメージがずっとあったが、授業内容は非常に面白く、先生方の説明も分かりやすかった。また授業を受けたいと思った。」
講義室で「食作用と生体防御」の講義をしていただきました マイクロピペットを使い、血液飛沫標本を作製しました
顕微鏡の観察像をスマホで撮影しました
細菌感染したマウスの筋組織です ほとんどが赤血球ですが、赤紫色の白血球が見られます
(青色が好中球です、変形した筋組織も見られます)
研究室訪問を行い、化学合成でできた分子がイメージした形になっているか解析する機器等を見せていただきました。
台湾 国立竹南高級中学203HRとのオンライン交流について
5月20日(月)日本時間15:30~17:00、本校応用数理科207HRと海外研修で訪問している台湾国立竹南高級中学の203HR(BiomedicalClass)生徒とオンライン交流を行いました。国立竹南高級中学はBiomedicalClassがあり、理科教育に力を入れています。
今回のオンライン交流では、初めに竹南高級中学の呂淑美校長と本校の秋山教頭があいさつを行いました。その後、本校生徒と竹南高級中学の生徒がお互いに、自己紹介を行い、事前に作成しておいたSchoolLifeについての発表を行いました。発表や質疑はすべて英語で行いました。本校生徒は竹南高級中学203HRの生徒達の英語力の高さのみならず、物怖じせずに英語を話す姿に驚いていました。
次回はEndemic Species(固有種)についての発表になります。今回のことが非常に良い刺激になっており、次回の交流に向けて頑張る気持ちが芽生えているようでした。
また、事後にはメール等での交流方法について説明し、生徒達は早速個別交流の準備を行っていました。
オンライン交流は3回実施する予定です。柔軟性のある高校時代に海を越えた生徒同士交流することでダイバーシティへの理解はもちろん、理科教育や英語教育にお互い頑張っている姿を知ることで、科学英語の学習意欲の向上につながる機会としたいと思います。
本校の2人のALTも参加してもらい、オンライン交流(SchoolLifeの発表)を行いました。
ALTの2人が発表準備等サポートしていただきました。大変お世話になりました。
竹南高級中学では、カメラを設置し発表を行ったそうです。Smoothに英語を話しており、スライドもきれいに作られていました。本校生徒も負けないように頑張って欲しいです。
Science Introduction(生物)
応用数理科1年生 Science Introduction(生物)の基礎実験を行いました。1クラスを2グループに分け、15人ずつ少人数での基礎実験になります。今回は原核細胞と真核細胞の大きさの違い、並びに真核生物の組織による細胞の大きさの違いの確認です。
材料はグランド横に自生しているイシクラゲ(ネンジュモ)とオオカナダモです。
ミクロメーターの使い方を説明した後、実際にミクロメーターを使い、イシクラゲの細胞の数や大きさ、オオカナダモの表と裏の細胞の大きさの違いやとげの細胞の観察などをしてもらいました。さらに、細胞の大きさや形の違いから細胞分化について考えてもらいました。事後レポートではなぜ大きさや形の違いが生まれているのか考えてもらいました。
よく観察することからいろいろな疑問が湧いてきます。
朝永 振一郎さんの言葉「ふしぎだと思うこと、これが科学の芽です。 よく観察してたしかめ、そして考えること、これが科学の茎です。 そうして最後になぞがとける、これが科学の花です。」
Science Introductionでは、科学の芽や茎を養い、2年生からの理数探究やAdvanced Scienceで、科学の花を咲かして欲しいです。
よく観察することから生まれる疑問を大切にし、これから科学的に探究する芽や茎を育みたいと思います。始まったばかりの応用数理科での学びが、素晴らしいものとなるよう、素晴らしい学びを提供したいと思います。
応用数理科2年生課題研究研修 徳島文理大学訪問並びにフィールドワーク
応用数理科2年生 課題研究のグループが徳島文理大学 薬学部で行われている「あおさのり の陸上養殖」に興味を持ち、課題研究として、あおさのり の陸上養殖に関わる研究がしたいとのことで、4月26日(金)、5月23日(木)の両日、徳島文理大学 薬学部 山本 博文 教授の研究室を訪問させいただき、あおさのりの生態やあおさのりの陸上養殖についてお話しを聞かせていただきました。
徳島文理大学 薬学部の山本博文教授は、「あおさのり」の生育過程で必要な成長促進因子サルーシン(海洋プランクトンが産生する極微量成分)を化学的に人工合成することに成功し、世界初の「あおさのり」陸上養殖を達成しておられます。お話を聞かせていただいている中で、高知県で陸上養殖場の設置を計画していることをお聞きし、今後、徳島で陸上養殖をするならどこの川がいいのかと疑問を持ち、「あおさのり の葉状体を育てるには、徳島県のどの川(汽水域)の水がいいのか」を研究テーマにすることになりました。
山本博文教授からあおさのり の葉状体をいただき、養殖法を教えてもらいました。また、5月17日(金)に、吉野川、勝浦川、神田瀬川、今切川の4カ所の川の水を採取しに行きました。これら4つの川の水をオートクレーブで滅菌し、あおさのりを生育させていきます。
今後、川の水の違いによる生育の差を調べるとともに、徳島文理大学と連携し、川の水の成分分析を行っていき、生育の違いが起こる原因について考察していきたいです。
また、山本博文教授が人工合成に成功されたサル-シンはいろいろな土壌に含まれているとのこと、どの土にサル-シンが多く含まれているのか検証実験にも繋げていければと思います。
今後、研究者の資質能力を養うために、生徒の主体的な学びを進める高大連携による課題研究を推進していきたいです。
4月26日(金)、5月23日(木)の2日間、徳島文理大学 薬学部 山本 博文 教授の研究室を訪問させていただきました。
アオサノリ以外にもアサクサノリなどの陸上養殖について、研究されています。
5月17日(金)に吉野川、勝浦川、神田瀬川、今切川の4カ所の川の水を採取しに行きました
応用数理科2年生課題研究研修 徳島大学にて
5月8日(水)の午後、これから課題研究を行っていく本校応用数理科2年生のグループが「微生物の培養と音の関係について」をテーマに研究を進めていきたいとのことで、徳島大学教養教育院 教授 渡部 稔先生のところに研究テーマの検証可能性について、お話しを聞きに行くとともに微生物の培養法の研修に伺いました。
音によりアルコール発酵が進むとの論文があり、そこからテーマを設定しましたが、渡部先生からの意見として、音により振動が起き、好気性である酵母菌の生育を進めている可能性が大きいとのことでした。課題研究のテーマについて、専門的な意見をいただき、深く考える機会となりました。
その後、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、酵母菌の培地の説明と培養法の実習をおこなっていただきました。滅菌し、微生物を培養する方法を理解することができました。微生物の培養法を生かして、課題研究を進めていきたいと思います。
これから私たちも、生徒達と一緒に、どのようなテーマが検証可能で検証意義があるものなのか、考えていきたいと思います。
今後も、高大連携をさらに進め、生徒の主体的学びを進めることができる、より発展的な課題研究を実施できるようにしていきたいです。
微生物についての説明とその培養法について説明していただきました
阻止円形成の大きさにより、抗菌性を示す 実際に酵母菌や枯草菌を培養し、持って帰らせていただきました
指標になることを教わりました 課題研究に活用させていただきたます