日本刀の分析結果
2025年7月18日 16時07分先輩からの継続研究の1つに「海部刀の原料はどこから来たか」があります。海部刀は鎌倉時代末期に海部氏𠮷(かいふうじよし)を祖とする刀匠により作られた刀剣です。戦国時代には、後に阿波藩主になる蜂須賀家がこの刀剣を用いて活躍したそうです。日本刀はたたら製鉄により作られた玉鋼を原料としていますが、その玉鋼の元になった砂鉄がどこからもたらされたのかが不明でした。そこで、国内各地の砂鉄を採取し、同時にその砂鉄から作られた玉鋼や刀剣を入手して、成分を調べて比較しようと思ったのです。
しかし、砂鉄と玉鋼はある程度まとまった数のサンプルを入手できましたが、刀剣のサンプルがなかなか見つかりませんでした。あちらこちらに問い合わせてみましたが、刀剣の破片の入手はかなり難しいものでした。そうしたなかで、ある方からついに複数の刀剣の破片を頂くことができました。そこで、早速分析にかけてみました。
結果は以下のとおりです。南北朝時代の越中(今の富山県)で作られた古宇多という刀剣です。宇多(うた)という刀匠の流派があるそうですが、それよりも古い時代なのでこのように呼ばれています。黄色が鉄で、赤色が酸素です。これを見ればかなり純度の高い刀剣であることがわかりました。
残念なことにまだ海部刀の破片が入手できていません。それでもいつかは入手できると信じて研究を続けていきます。