寒谷の赤い石と根尾谷のさくら石の分析結果
2025年4月23日 10時45分岐阜県西部の根尾谷は、菊花石という鑑賞石を産出することで有名です。黒い石の表面に放射状に伸びた白い結晶が浮かび上がり、それが菊の花のように見えることからそう呼ばれるようになりました。白い結晶を調べると主成分は炭酸カルシウムであり、結晶構造からそれは方解石の同質異像である霰(あられ)石とわかりました。
根尾谷では最近になって「さくら石」という鑑賞石が話題になりました。黄土色の母岩に赤色の桜または梅の花のような結晶が浮かんでいるものです。ちょうど阿南市の水井水銀鉱山の鉱石を分析するところだったので、これらをSEMで元素分析してみました。
結果は以下のとおりです。黄色がカルシウム、赤色が酸素、橙色がアルミニウムでした。岩石が赤いと酸化鉄をイメージするため、鉄が含まれていると考えてしまいます。しかし、このさくら石には鉄がほとんどなくアルミニウムが多いことがわかりました。確かにアルミニウム原料のボーキサイトも赤い石や土です。水井の赤い石も同様の結果となり、こちらにも水銀が含まれていませんでした。
一般の化学実験では分析できませんが、機器を選んでそれを利用すると短時間で正確に測定することができます。生徒たちに感想を尋ねると「分析が楽しくなってきた」、「高価な機器を使わせてもらい感動している」、「操作が思ったより簡単だった」、「この機器が欲しい」など好意的な返事が返ってきました。今後も続けていきたいです。