2024年6月の記事一覧

応用数理科Advanced Science 生命科学

6月25日(火)Advanced Science 生命科学分野を実施しました。今回のテーマは、「金属イオンがゾウリムシの繊毛運動に与える影響」です。慶応義塾大学の実験を参考にさせていただきました。

すべての真核生物の繊毛は、中心に2本の微小管とその周囲に9本の二連微小管から形成されています。この二連微小管に結合するダイニンがATPを分解し、隣り合う二連微小管上を滑ることで繊毛が動きます。繊毛の動きは、ダイニンのATP解酵素活性と深く関係しており、この酵素は、Mg2+(マグネシウムイオン)やCa2+(カルシウムイオン)で活性化され、Ni2+(ニッケルイオン)で阻害されます。Ni2+により停止した繊毛運動が、他の金属イオンを用いることで回復するかどうか遊泳行動を観察して調べることで、各種金属イオンの繊毛運動に与える効果を考察することを目的としました。

実験では、まず100 mMのNiSO4水溶液を作成し、それを希釈することで0.5 mM、0.3 mM、0.1 mM、0.02 mMのNiSO4水溶液を作成しました。次にマイクロピペッターでゾウリムシ懸濁液を75μLを時計皿に取り、実体顕微鏡で観察し動きを確認しました。その後、0.02mMのNiSO4水溶液を75μLを加え、3分間は連続で観察をおこない、その後は、3分おきに12分まで観察しました。遊泳速度や泳ぎ方の変化に注意して観察すると共にゾウリムシの半数が遊泳を停止した時間を記録できるようにしました。また、0.1 mM、0.3 mM、0.5 mMの濃度のNiSO4水溶液で同じ操作を行い、観察を行いました。

 結果は、0.02 mMでは、動きがゆっくりになり、0.1 mMではくるくる回る本来の動きがなくなり、同じところを行ったり来たりする動きになり、0.3 mMや0.5 mMでは、3分でほとんどの個体が動かなくなりました。

Ni2+(ニッケルイオン)の濃度により、動きの変化や時間により動かなくなっていくゾウリムシを観察し、顕微鏡を見ながら「動かなくなった」「動きが変わった」と声を発するほど、生徒たちは興味を惹かれていました。 

次に、ゾウリムシ懸濁液75μLを時計皿に取り、0.2mM NiSO4を75μLを加え、すべてのゾウリムシの動きを止め、100mMのCaCl2、MgCl2、BaCl2、並びに蒸留水を75μL加え、3分までは連続観察し、その後は、6分後、10分後の様子を観察・記録し、動いていたゾウリムシの割合を記入しました。

結果は、Ca2+(カルシウムイオン)では、6分後には動きが活発になり、10分後には本来の動きに戻る場合が多く、 Mg2+(マグネシウムイオン)では動きは回復するんものの、10分後に本来の動きになる個体は半分程度でした。Ba2+(バリウムイオン)では、やや回復するものの動きが戻った個体は20%~30%でした。

金属イオンにより動きの回復がみられるものの、金属イオンの種類により回復の様子が異なっており、生徒たちは金属イオンの影響を非常に面白く感じていました。

この実験は動きの違いや時間による変化が見られ、生徒の興味関心を惹くことができ、金属イオンが代謝に与える影響についての導入実験になると感じました。今後、他の原生生物で実験を行うなど新たな教材開発に挑戦してみたいです。

ゾウリムシについて説明しています      マイクロピペットを扱います    ゾウリムシの動きがよく分かります

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応用数理科Advanced Science 高大連携授業 生命科学

6月18日(火)Advanced Science 高大連携授業 生命科学分野として、先週に引き続き徳島大学教養教育院 教授 渡部 稔 先生の所へ訪問させていただきました。本日のテーマは「電気泳動にてお米のDNA断片を分析しよう」です。先週PCR法にて増幅したDNA断片を本日は電気泳動にてDNA断片の長さに応じて分離し、分析します。初めに、先週増幅したDNA断片をDNA分子マーカーと共に電気泳動にかけました。すべての生徒がアガロースゲルのウェルに流し込むことに成功し、電気を流しました。通電してるかどうかは、電極を見れば分かります。+極には酸素、-極には水素が泡となって発生していると電気が流れている証拠です。通電している間に、電気泳動の仕組みを説明していただくと共に、2つ目の実験を用意していただいていました。

2つ目の実験は「プラナリアの再生実験」です。プラナリアは驚異の再生力を持ち、小さく切り刻んでもそれぞれから再生し、新たな個体が生まれてきます。プラナリアが再生する仕組みは、磁石のN極S極の仕組みと同じで、小さく切断されれば、新たな位置情報が発生し、位置情報から体の部分が作り直されるとのことです。生徒達は不思議な再生能力を持つプラナリアに興味を惹かれ、プラナリアをどのように切断するか思考をめぐらせていました。実際の切断では、手慣れた手さばきで上手に切断できていました。再生の結果は、後日写真を送ってくれるとのこと。生徒の興味関心を惹き、じっくり考えることができる非常に面白い教材であると感じました。また、学校でも実施してみたいと思いました。

さて、電気泳動はすべての生徒で成功。お米の品種分析は完璧でした。高大連携授業を通じて、大学での学びについて理解でき、さらに生命現象について、じっくりと考え、検証していく面白さを分かってもらったのではないでしょうか。引き続き、生命現象を教材として科学的な物の見方や考え方を育んでいきたいです。

PCRで増幅したDNA断片をアガロースゲル 通電させ、泳動させます  プラナリアを実体顕微鏡で見ながら切断します

のウェルに入れています。

氷の上にろ紙を置き、動きを止めます       上手く切断できました

                      プラナリアは大きくなると自然に切断され、2匹になるそうです

このように切り刻むと          10日後 合計10匹のプラナリアができました(全部目があります)

紫外線を照射し、アガロースゲル上のDNAのバンドを見る   A:2つのDNA断片のバンドがあるもの(ひとめぼれ)

装置です                         B:長いDNA断片のバンドがあるもの(あきたこまち)

                             C:短いDNA断片のバンドがあるもの(コシヒカリ)

 

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台湾 国立竹南高級中学203HRとのオンライン交流(2回目)について

6月17日(月)日本時間13:30~15:00、本校応用数理科207HRと台湾国立竹南高級中学の203HR(BiomedicalClass)生徒と第2回目オンライン交流を行いました。

今回はEndemic Species(固有種)についての発表です。Microsoftチームズでそれぞれのブレイクアウトルームに分かれ、グループごとに発表を行いました。前回の反省を生かし、事前準備としてEndemic Species(固有種)について、それぞれのグループで調べ、スライドの作成を行い、発表練習を行ってきました。また、Microsoftチームズを使った発表練習を行い、準備をしてきました。通信やグループ分けのトラブルもありましたが、何とか発表できました。次は、海外研修に参加する人の紹介と現地で発表する課題研究の内容を説明を行う予定です。オンラインでの交流を継続して、より効果の高い12月の海外研修が実施できるよう取り組みを進めていきます。さらに今後は共同研究の実施や合同発表、また課題研究の手法の伝達など、サイエンスや探究活動を通じた国際交流を実施できればと考えています。

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応用数理科308HR 高大連携事業(物質科学分野3回目)

 6月18日(火)14時から17時にかけて、徳島文理大学薬学部にて北村圭先生並びに学生スタッフの方から、薬品合成実験としてアスピリンの合成を指導していただきました。高校の5限目が終了した後、生徒7名・教員1名が大学に移動しました。男女2つの班に分かれると簡単な自己紹介の後に実験の説明があり、サリチル酸からアセチルサリチル酸(アスピリン)を合成しました。

 サリチル酸を無水酢酸とじっくり反応させ、氷浴により冷却すると白色の結晶が得られました これを吸引ろ過して結晶を生成した後、再びエタノールに溶かして不純物を取り除くと真っ白な結晶になりました。収率は男子42%、女子が何と91%もありました。その後、塩化鉄(Ⅲ)により未反応のフェノールを確認したり、各磁気共鳴装置NMRを用いて物質の構造を確認しました。

 生徒たちにとってとても有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました。

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応用数理科Advanced Science 高大連携授業 生命科学

6月11日(火)徳島大学教養教育院 教授 渡部 稔 先生の研究室へ訪問させていただき、Advanced Science 高大連携授業 生命科学を実施しました。今回のテーマは「お米の品種をDNA解析により調べよう」です。PCR法、電気泳動など先日理数生物探究で習った内容が盛りだくさんです。あきたこまち と ひとめぼれ は コシヒカリを親とした掛け合わせで品種が生み出されておりそれぞれの第6番染色体に存在する遺伝子の持ち方が異なっています。その部分をPCR法で増幅し、電気泳動でその存在を調べることで、品種が分かる仕組みです。基本的にウイルスのPCR検査やワカメの品種特定など同じ方法で行われています。

さて、最初はPCRでターゲットとする遺伝子領域を増幅します。まずPCRに必要な溶液をまぜ合わせマスターミックスを作ります。マスターミックス作成の際のタッピングやマイクロピペットの操作については、何回かしているのでしっかりできますね。その後、お米を砕き、それをPCR反応溶液が入ったマイクロチューブに入れ、PCRを行う機械であるサーマルサイクラーにセットし遺伝子増幅を行います。PCRは少し時間がかかるのでここまでです。

さらに、2種類のDNA断片を染色したものを電気泳動にかけ分析しました。2種類のDNA断片が移動していき、分離している様子がよく分かったと思います。来週は、自分たちが作ったDNA断片を電気泳動にかけます。果たして成功するでしょうか。楽しみです。

マスターミックスを作成しています  お米を砕いてDNAを取り出しやすくします 砕いたお米をPCR溶液内に入れます

 遠心分離にかけ           PCRを行うサーマルサイクラー   最後に練習として電気泳動を行い

                   にセットします          ました。青が長い断片、紫が短い断片です

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