物質科学 高大連携事業(徳島文理大学薬学部)
5月27日(金)の午後,3年生物質科学の選択者ほか5名で,徳島文理大学薬学部薬品物理化学研究室の福山愛保先生のご指導で「鈴木宮浦カップリング反応を使って炭素と炭素をつなぐ~ノーベル化学賞の化学反応をやってみよう~」を受講しました。
2010年ノーベル化学賞のカップリング反応について,簡単に解説を聞いた後,少人数ということもあり,研究室の実験台をお借りしての実習となりました。
今回合成した物質は,4-カルボキシビフェニルという物質です。
いかにも水には溶けなさそうな構造をしていて,実際水には溶けないのですが,この物質を,4-ブロモ安息香酸とフェニルボロン酸の塩基性水溶液!中で合成しようというのです。有機化合物の反応には空気中の酸素や水分を嫌うものが多く,高校の実験室ではなかなかできないものが多いのですが,この反応は水溶液中で触媒と混ぜるだけで反応が進んでしまうという,常識破りの反応です。さすが,ノーベル化学賞を受賞するだけのことはあります。
実際やってみると,少量の物質を正確に量りとるのが難しかったくらいで,あっけないくらい簡単に,白い粉末を取り出すことができました。この反応の発見者である鈴木先生が,この反応を応用して作られた薬を服用しているという話を聞いたことがありますが,これなら安価に大量生産を求められる医薬品の製造に応用されているのも納得がいきます。(写真は実験風景)
合成実験の後は,1H-および13C-NMRを用いての同定実験です。
分析機器室へと移動し,大学院生の操作する測定装置に合成した試料を入れ,待つこと数分。独特の形をした図が表示され,測定終了。測定の原理や図の読み方は,学校に戻ってから後日勉強することになりました。
ちょうど化学の授業では,有機化合物の構造決定を習っているところで,化学反応だけではとても無理なことが,ものの数分でできてしまう技術の進歩を感じることができました。
実験後には,応用数理科の卒業生も顔を見せてくれ,2年生で早くも研究室のメンバーになっているとのこと。さすがは応用数理科,なのでした。