令和4年度城南祭ファイヤーストーム

 9月9日の夜です。ほんの2時間前まで熱戦を繰り広げていたグラウンドが、まるで何事もなかったかのようにシ~ンと静まりかえっています。そして、3箇所に立てられた丸木を中心に薪が積み上げられ、体育館のベランダからその全体像が浮かび上がってきました。3年ぶりに、本当に待ち望んでいた、本来の姿での、伝統のFSがここによみがえります。

 全校生徒・教職員が体育館前に集まりました。少しざわざわしていましたが、FS実行委員長たちが入場すると途端に静かになりました。今から「静の時間」が始まります。するとそこへ炎の走者が現れました。種火となる聖火に火をともします。その後、各学年代表のトーチに分火され、積み上がった櫓(やぐら)の元へ向かいます。そして、後ろを振り返った全員が見ているなかで、点火!後はファイヤーキーパーに任せます。

 太鼓の音に合わせて委員たちがエールを送ります。続いて寮歌が厳かに歌い上げられていきます。こうしてつつがなく儀式が終わりました。次はいよいよ「動の時間」です。

 「どーん」という太鼓の音が響きました。列の最後尾にいた旗持ちが先頭になり、グラウンドの中へと駆け出しました。やっぱり3年生は速い。櫓の周りに次々と後続が押し寄せます。それを見ていた2年生が動き出し、ためらっていた1年生も覚悟を決めて走り出しました。各クラスは旗持ち、正確には幟(のぼり)を持った者の後に続きます。そして、他のクラスに出会うと歌や踊りでエールを交換します。

 「動の時間」も中盤にさしかかると、生徒の気分は絶好調!ハイテンションで走り回り叫び回り飛び回り、そこかしこのカオスの中で若いエネルギーが炸裂しています。燃え上がる櫓も加わって、まさに熱と興奮のるつぼでした。そしてまた「どーん」という太鼓の音が鳴りました。

 入り乱れていたクラスが徐々に整い始めて、いつしか長い列となりファイヤーストームの周りに集まってきました。再びの「静の時間」がやってきました。少しずつ熱が冷めてきて、高揚していた気持ちからも覚めてきたようです。ふと周りを見渡すと、火を取り囲んでじっと燃える炎を見つめています。そのまなざしの中に様々な思いが交錯しているように思えます。

 先頭を走っていた幟に、クラス全員のハチマキを結びつけました。これから投入の儀式を行います。ここまでの高校生活の思いと未来への願いを込めて、幟を火の中に投げ込みます。投入されるたびにそのクラスからガッツポーズとともに歓声が上がります。うれしいような寂しいようなそれらすべてがこめられた思いでした。それが終わると、実行委員の旗振りたちが唱歌に合わせて旗を回します。騒ぐこともなく踊ることもなく、皆静かにそれを見守っていました。

 火花をまき散らしながら炎が燃えさかります。濡れた地面にもその火の色が映えて、まるで地面ごと燃えているようです。このような光景は今まで見たことがありません。それもそのはず、大雨が降っている最中に体育祭などしないからです。しかし、今年は延期に延期を重ねて時間的余裕がなく、強行か中止かの決断を迫られました。そして、多くの懸念があるなかでも一か八かの勝負に打って出た。そして、私たちは見事に勝利を収めました!