ある日の化学実験「石炭からのタール抽出」

 期末試験が終わってほっとしたある日の放課後、化学実験室に生徒有志が集まって何やら実験をしていました。今日のテーマは「石炭」です。石炭の産地と言えば北海道の夕張や釧路の太平洋炭鉱、九州の三池炭鉱や山口県の宇部とか茨城県の常磐などが有名です。ところが、余り知られていませんが徳島県下にもいくつか炭鉱があったのです。

 先週の休日に有志の一部がバスに乗って、現地へ赴いて石炭を採集してきました。それをお披露目していると、ついでだから燃やしてみようという話になったのです。細かくした破片を試験管に入れ、バーナーで熱してみました。すると、真っ黒な煙が上がり粘性のある黒い液体ができました。コールタールです。初めて見る者がほとんどで興味深そうにしていました。

 コールタールは、大正から昭和にかけて石炭産業が隆盛だった時代に道路の舗装として用いられました。真夏の炎天下の道路でコールタールが融け、ベトベトして運動靴の裏にくっついてなかなか取れませんでした。他にも公園の遊具の接着や防腐剤の代わりに使われていたこともあります。そうした昔のことを話してみると、彼らは面白そうに聞いていました。

 年号が2回も変わって昭和はすでに遠くなりました。私たち教員の中にも平成生まれの方が増えてきました。そして、今ここにいる生徒たちはこれからの時代を背負って立つ者たちです。彼らの興味や関心をもっとかき立てて、視野の広い研究をして欲しいです。